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Japan Association of Dental Traumatology

抄録集

・大会長講演 ・教育講演 ・基調講演 ・特別講演

大会長講演

高齢者における口腔機能と全身機能・日常生活動作(ADL)との相関関係
戸谷孝洋  1)九州歯科大学 口腔再建補綴学分野 2)戸谷歯科クリニック
抄録

 高齢者における口腔機能低下は、咀嚼や嚥下などの口腔機能障害にとどまらず、低栄養、フレイル、サルコペニアなど全身機能の低下を引き起こす重要な要因として注目されている。日本歯科医学会は、口腔機能低下症を口腔衛生不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下の7項目から包括的に評価する疾患と位置付け、7項目中3項目以上の機能低下を認めた場合に口腔機能低下症と診断するとしている。また、日本老年歯科医学会、日本老年医学会および日本サルコペニア・フレイル学会の3学会は合同ステートメントにおいて、オーラルフレイルを口腔の軽微な衰えと位置付け、その進行により口腔機能低下症を経て、全身のフレイル、さらには要介護状態へ移行する過程を示している。
 一方で、歯科臨床において口腔機能低下症の検査法は整備されつつあるものの、各検査項目が全身機能や日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の低下とどのように関連しているのかについては、十分なエビデンスが蓄積されているとは言い難い。そのため、口腔機能低下症の診断が全身管理や介護予防へどのように活用できるかについては、いまだ明確な指針が示されていない。
 本講演では、施設入所要介護高齢者を対象に実施した研究結果をもとに、口腔機能低下症の各検査項目および低下項目数と全身機能・ADL低下との関連について報告する。さらに、全身機能の維持・改善に寄与する可能性の高い口腔機能項目を明らかにし、その知見を踏まえながら、これからの超高齢社会において歯科医療が果たすべき役割と、エビデンスに基づく口腔機能リハビリテーションの実践について考察する。


基調講演

顎口腔領域の外傷の診断と治療 -特に歯の外傷の処置について-
長畠駿一郎  (元)香川大学医学部歯科口腔外科学講座
抄録

 日本外傷歯学会は外傷歯に対する臨床に役立つ新しい治療方針を目指し2001年に設立、平成20年に「外傷歯治療のガイドライン」を制定、その後、平成24年、平成30年、令和2年に改訂した。
 歯の外傷は幼少期から小児期に受傷することが多く、また、乳歯の萌出、永久歯への交換など、その状況は複雑で、成長発育に応じた的確な判断、治療が必要となる。今回の講演では統計からみた小児の口腔外傷の特徴、外傷による歯の破折(歯冠、歯根)、歯の脱臼(陥入、挺出)、完全脱臼した脱落歯の保存方法と再植の処置、外傷歯の固定法、歯槽骨骨折・歯肉や粘膜損傷の処置などについて実際の臨床症例を供覧する。多くの症例が30年~50年前に経験したものなので治療方法なども今日考えてみると種々問題点があると思われるがご了解願いたい。


特別講演

歯科医事相談の実際と、医療トラブルの防止について
後藤修一郎 九州歯科大学口腔再建補綴学分野
抄録

 近年、患者の権利意識の高まりや情報化社会の進展に伴い、歯科医療に関する医事相談や医療トラブルは多様化・複雑化している。とりわけ外傷歯科診療では、受傷状況や予後の不確実性から、治療内容だけでなく説明や対応が患者満足度に大きく影響する。
 演者は長年、歯科医師会医事相談室員として数多くの医事相談に携わり、医療紛争へ発展した事例や、その一歩手前で解決に至った事例を経験してきた。本講演では、それらの経験をもとに、医事相談の実際とトラブル発生の背景を分析し、歯科医療現場で実践可能な予防策について考察する。
 具体的には、患者とのコミュニケーション、インフォームド・コンセント、診療録・画像記録の重要性、偶発症や予後に関する適切な説明など、日常診療におけるリスクマネジメントの要点を解説する。また、外傷歯科診療に特有の留意点にも触れ、医療トラブルを未然に防ぎ、患者との信頼関係を維持するための実践的な対応について紹介したい。
 本講演が、会員諸氏の日常診療における安全な医療の提供と医療紛争の予防に役立つ機会となれば幸いである。